離職防止のカギとなる「エンゲージメント」とは?必要性から向上のための取り組みまで徹底解剖(基本編)

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離職防止のカギとなる「エンゲージメント」とは?必要性から向上のための取り組みまで徹底解剖(基本編)

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皆さまこんにちは。

こちらのコラムでは、離職防止・心理的安全性の高い職場づくりの取り組みとして注目されている「エンゲージメントの向上」について、全2回にわたって解説してまいります。

前編である今回は、エンゲージメントとはそもそもどういうものなのか、また向上させることの必要性やメリットをご紹介いたします。

このような方にオススメのコラムです:

「エンゲージメント」について知りたい方

離職防止・定着率向上のための取り組みを始めたい方

離職防止・定着率向上のための取り組みをしているが、なかなか効果が出ない方

はじめに:日本の社員はエンゲージメントが低い!?

従業員の会社に対する愛着心を表す「エンゲージメント」ですが、日本においてエンゲージメントが高い社員の割合は100%中どれくらいだと思いますか?
(エンゲージメントの言葉の意味についてはこの後詳しく解説します。まずは直感で答えてみてください!)

アメリカのギャラップ社が組織のエンゲージメントを測るために実施している「エンゲージメント・サーベイ」というものがあります。

ギャラップ社は、全世界1300万人のビジネスワーカーを調査し、エンゲージメントを測定する12の質問「Q12」を導き出しました。

【ギャラップ社のQ12
  1. 私は仕事の上で、自分が何を期待されているかがわかっている。
  2. 私は自分がきちんと仕事をするために必要なリソースや設備を持っている。
  3. 私は仕事をする上で、自分の最も得意なことをする機会が毎日ある。
  4. この1週間で、良い仕事をしていることを褒められたり、認められたりした。
  5. 上司あるいは職場の誰かが、自分を一人の人間として気遣ってくれていると感じる。
  6. 仕事上で、自分の成長を後押ししてくれる人がいる。
  7. 仕事上で、自分の意見が取り入れられているように思われる。
  8. 会社が掲げているミッションや目的は、自分の仕事が重要なものであると感じさせてくれる。
  9. 私の同僚は、質の高い仕事をするよう真剣に取り組んでいる。
  10. 仕事上で最高の友人と呼べる人がいる。
  11. この半年の間に職場の誰かが私の仕事の成長度合について話してくれたことがある。
  12. 私はこの1年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った。

この調査によると、日本のエンゲージメントの高い社員の割合はなんとたったの6%という結果でした。これは、調査対象の139カ国中132位と最下位を争うレベルです。

日本におけるエンゲージメントが低い原因は、エンゲージメントそのものの認知度の低さ、またエンゲージメントを高めることのメリットを知る機会が少なく、重要視されていないところにあると考えられます。

このコラムが、皆さまがエンゲージメントに興味を持っていただくきっかけとなれば幸いです。

エンゲージメントとは

『エンゲージメント』という単語は様々な意味を持っています。

たとえば、「約束」「合意」「契約」「婚約」など…

身近なものだと、婚約指輪をエンゲージメントリングと言ったりもしますね。

『エンゲージメント』は、主にヒトやモノ・コトの結びつきを表します。

よく「組織の成長にはエンゲージメントの向上が必要だ」「エンゲージメントの高い企業は成功する」などといった使われ方をしますが、ビジネスにおいては従業員と組織の結びつきが強い状態、さらに噛み砕くと《従業員の会社に対する愛着心や愛社精神、思い入れが強い》状態を『エンゲージメントが高い』と表現することができます。

☆POINT☆ 組織におけるエンゲージメントを簡易的に測る質問として「あなたが勤務する会社を友達に紹介したい(勧めたい)ですか?」というものがあります。 愛社精神が強い(=エンゲージメントが高い)ほど肯定的な回答が返ってくると考えられます。

コンサルティング会社ウィリスタワーズワトソンが、エンゲージメントについてこのように定義しています。

従業員の一人ひとりが企業の掲げる戦略・目標を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲

つまり、組織において企業が目標を掲げているだけ、また反対に従業員一人ひとりが力を発揮しているだけ、というのはエンゲージメントが高い組織だとは言えません。

企業が従業員に対して目標を明確に提示し、なおかつ従業員はそれをきちんと理解している。そして従業員自らがそこに向かって参加し進んでいこうという気持ち(=貢献意欲)を持っている状態、これこそが企業と組織の結びつきが強い、つまりエンゲージメントが高い状態だと言えるでしょう。

 

エンゲージメントは、組織に属する従業員ひとりひとりの考え方や価値観を尊重した考え方なのです。

従業員満足度との違い

これまで人材育成・離職防止対策として主に重要視されてきたのは、従業員がどれだけ会社・職場に満足しているかを表す「従業員満足度」の向上でした。

従業員満足度は、給与や福利厚生の見直し、オフィス内の環境整備などで変動しますが、これらは見直しに多くの人的または時間的コストが掛かるうえに、従業員によって重要度が異なります。「出世をすることやより多くの給料をもらうことよりも、働きやすさを重視している」という人がいれば、一方で「カフェスペースなんていらないから、お給料を上げてほしい!」と考える人もいます。

 従業員満足度従業員エンゲージメント
目的社員満足を促す貢献意欲を引き出す
項目待遇に関すること待遇に加えて目標・活動・風土に関すること
関係会社から社員に一方的に提供する社員が期待しているもの会社から提供する

対してエンゲージメントは、前項でお伝えしたようにひとりひとりの考え方や価値観を尊重した考え方です。

会社から一方的に提供するものではなく、従業員それぞれが自ら積極的に行動を起こしたいという気持ちに着目しそれを引き出していくことで、優秀な人材の定着、ひいては組織の存続に繋がっていくのです。

エンゲージメントが注目される背景

 ①エンゲージメントが企業業績を左右する

エンゲージメントと企業の業績はとても密接に結びついています。

下のグラフは米ギャラップ社による調査で、エンゲージメントが企業の業績評価指数にどのような影響を与えるかをまとめたものです。

エンゲージメントの高い組織は低い組織に比べて、収益性や生産性、そして顧客満足度が高いという結果が出ています。

また、組織の業績に関わる数値だけでなく、欠勤や事故(業務上の安全性による事故)の少なさといった組織形成に大きく寄与する個々人のパフォーマンスも高いことがわかります。

 ② 従業員の「やりがい」に着目した新たな離職防止対策

SOMPOホールディングス株式会社が2021年に行った「仕事に対する価値観の変容に関する意識調査」では、働くうえで幸福と感じるものとして、待遇面・労働環境に関する項目が上位を占める中で、『自身の役割を理解し、仕事にやりがいをもっている』という内面的な要素を重視する方も多いことがわかりました。

《従業員満足度との違い》でもお伝えしたように、福利厚生の見直しには多くのコストがかかり、従業員から見た重要度にもばらつきがあります。

従業員のやりがい(=貢献意欲)にフォーカスを当て、エンゲージメントを向上させることは、働き方に対する価値観が多様化する中で新たな離職防止対策・定着率向上の取り組みとして注目されています。

従業員の価値観はさまざま、だからエンゲージメント

今回は、離職防止対策として注目されているエンゲージメントについて、概要と重要視される理由をご紹介いたしました。お伝えしたように、エンゲージメントはひとりひとりの価値観に寄り添った考え方です。後編では、従業員それぞれが持つ《やる気の構成要素》を可視化する施策、エンゲージメントを向上させる具体的な取り組みについて解説いたします。

 

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