総務の魂 vol.93
パワハラのない理想の職場づくりをしましょう!
今回から、パワハラを予防し、パワハラのない理想の職場づくりをするためには何をしたらよいのか、そのポイントを順序立ててお伝えします。今号ではまずその前提となることをお話します。
Ⅰ.パワーハラスメント(パワハラ)とは?
優越的な関係を背景とした言動であって」、「②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより」、「③労働者の就業環境が害されるものであり」、①②③の全てを満たすものをいいます。
しかし、実際にはパワハラは感情の問題ですので1つでも該当すると社員からパワハラと言われるリスクがあります。
Ⅱ.パワハラの6類型とは
【1.身体的な攻撃】
・殴打、足蹴りを行うこと。
・相手に物を投げつけること。等。
【2.精神的な攻撃】
・人格を否定するような言動を行うこと。
・業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
・他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。等。
【3.人間関係からの切り離し】
・自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外したり、長期間にわたって別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。
・一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。等。
【4.過大な要求】
・長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下で勤務に直接関係のない作業を命ずること。
・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。
・労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。等。
【5.過小な要求】
・管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
・気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。等。
【6.個の侵害】
・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。等。
以上、パワハラの6類型は職場で実際に起きているパワハラの代表的なものです。
パワハラを予防するにあたっての基本的な知識ですので、ぜひ覚えていただきたいと思います。
次回は、なぜパワハラ予防が重要なのか、その理由について構造的に説明をしたいと思います。
労働関係法令等の最近の動き:いよいよ来年4月1日に中小企業にパワハラ防止措置が義務化
~対応準備はお済みでしょうか?ハラスメント関連の今後の動向など~
■ パワーハラスメント
通称パワハラ防止法(労働施策総合推進法の改正)は、2020年6月1日に施行され、同日より大企業では職場のパワーハラスメント防止措置を講じることが義務化されています。また同日にパワーハラスメントの定義が法律上規定されたこと等を踏まえ、精神障害の労災認定基準の「業務による心理的負荷評価表」にパワーハラスメントが明示され、安全配慮義務としてのハラスメント防止措置がこれまで以上に強く求められることになりました。
いよいよ来年2022年4月1日から中小企業でもパワーハラスメント防止措置が義務化となります。
パワハラ防止法には、罰則は定義されていません。 ただし、厚生労働大臣が必要があると認めるときは、事業主に対する助言、指導または勧告をすることができます。 また、規定違反への勧告に従わない場合にはその旨が公表される可能性もあるため、注意が必要です。
厚生労働省の「職場におけるハラスメント関係指針」では、職場のパワハラを防止するため、事業主が雇用管理上、講ずべき4つの措置が次のとおり示されています。
【パワーハラスメント防止のための指針】
(1)企業(事業主)の方針の明確化と周知・啓発
(2)相談や苦情に応じ、適切に対処する体制整備
(3)職場におけるパワハラへの迅速かつ適切な対応
(4)(1)~(3)の措置と合わせて講ずべき措置
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すでに対応済み、または検討中の企業様もあると存じますが、これから検討される企業様におかれましては、先ずは(1)において、就業規則の服務規律や禁止事項、懲戒規定で規定し、従業員に対して自社がパワハラ防止に取り組むことを周知して頂く必要があります。パワハラだけでなくセクハラやマタハラも含め、ハラスメント防止規程を整備してもよいと考えます。
次に、相談窓口の設置を検討し、相談の受付~事実調査~ハラスメント該当・非該当の判断~被害者・行為者への措置までの具体的な対応手順を検討します。
また、未然にハラスメントを防ぐために、ハラスメント防止研修を実施されることをお勧めします。管理職だけでなく、一般の従業員も含めて職場全体が、ハラスメントの正しい知識とそれを防ぐために必要なことを学び、どうすればお互いに働きやすく、コミュニケーションが活発な生産性の高い職場環境になるのかを考えてもらい、実践につなげます。
■ カスタマーハラスメント
この数年、小売業、流通業、サービス業、介護の現場等において、顧客・取引先からの”著しい迷惑行為”である「カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」)」が急増しています。既述のパワハラ防止法(労働施策総合推進法の改正)の措置義務の対象とはなっていませんが、「顧客・取引先とのトラブルの際に、従業員からの相談体制の整備や被害者への適切な配慮を行うことが望ましい」と明記されています。
このため厚労省は、2022年度からカスハラ対策の強化に着手する考えであり、2021年度中に”カスハラ防止対策に関する企業向けマニュアル”を作成する予定となっています。
【カスタマーハラスメント(顧客などからの著しい迷惑行為※)】の内、特に多い事例
※通常の正当なクレームや、サービス改善に資する指摘の範囲を超えるもの
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カスハラの被害を受けた従業員は、大きなストレスや不安にさらされ、心身の不調や離職につながることがあります。
これを会社が放置してしまうと、「お客様の言うことを聞かなければならない」「自分に責任がある」と考えた従業員がカスハラを抱え込み、さらに事態が悪化することもあります。過剰な顧客対応が生産性を低下させたり、本来のサービス品質を低下させたり、不要なコストが増加する可能性があります。
カスハラへの対策は、上記のパワハラと同様に現場がすぐに相談できる体制をつくることが第1歩となります。
また、従来から、クレーム対応の教育研修やマニュアルづくりに取り組まれている企業様におかれましても、近年増加傾向にあるカスハラの問題を踏まえて、自社の事例を収集し、どこまでが顧客で、どこから毅然と対応すべきかの判断基準と対応マニュアルを見直すことをお勧めいたします。
総務のお仕事カレンダー 2021年10月・2021年11月
10月1日(金) | 「2022年度卒業・終了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」に定める大学卒・大学院卒採用選考の内定式
■参考リンク:内閣官房「2022年度卒業・終了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_katsudou/pdf/r021029_siryou.pdf |
10月11日(月) | 9月分の源泉所得税・復興特別所得税・住民税特別徴収税の支払
■参考リンク:国税庁「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納付の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm |
11月1日(月) | 9月分の健康保険・厚生年金保険料の支払
■参考リンク:日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/nofu/nofu.html |
11月10日(水) | 10月分の源泉所得税・復興特別所得税・住民税特別徴収税の支払
■参考リンク:国税庁「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納付の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm |
11月30日(火) | 10月分の健康保険・厚生年金保険料の支払
■参考リンク:日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/nofu/nofu.html |
[1] 定時決定の反映
算定基礎届に基づく定時決定により、9月から新たに改定された社会保険料が適用されています。社会保険料の控除を翌月に行っている会社の場合、10月支払いの給与から改定額に基づいた控除を行うことになります。
■参考リンク:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.html
[2] 最低賃金の改定への対応
10月1日より、令和3年度の地域別最低賃金が都道府県ごとに改定され順次発効されます。発効年月日が含まれる給与計算期間から、地域別最低賃金以上の賃金を適用するようご注意ください。
参考リンク:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/index.html
[3] 年末調整の申告書の手配
年末調整の時期が近づいてきました。記入書類・添付書類の確認と準備を早めに行い、各従業員へ案内することで年末の慌ただしさも緩和できます。書類の回収スケジュールを各従業員へ事前に周知し、ミスの発生を未然に防ぎましょう。
■参考リンク:国税庁「年末調整のしかた」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2021/01.htm
[4] お歳暮、年賀状の手配
取引先へのお歳暮等の準備も早めに行いましょう。また、年賀状等の年始の挨拶についても、住所変更の確認、喪の確認など早めに取り掛かりましょう。
[5] 来年度の会社カレンダーの準備
1月1日起算で年間の会社カレンダーを作成している場合は、来年度の祝日等を確認しつつ作成の準備を始めましょう。同起算日で1年単位の変形労働時間制に関する労使協定、36協定を締結している場合は、協定の更新準備も忘れずに行いましょう。
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【パワハラ防止法の施行】
2020年6月1日(中小企業は2022年4月1日)、パワハラ防止法が施行されました。職場のいじめ・嫌がらせの増加傾向に歯止めをかけるために、職場においてパワハラを予防、防止するための措置が義務化されました!
【パワハラの予防に向けて】
パワハラはルールや防止措置だけでは根絶することは困難です。それは、パワハラが起こる要因は、人の「感情」の問題だからです。
パワハラを発生させないためには、働く人たちにとって安心・安全な職場(パワハラが起こりづらい環境)をどのようにつくるかがポイントになります。
そのためには、「望ましい組織の在り方」を明確にすると同時に、なぜ、人は怒りという感情を持つのかという理解、人と人との関わりの質(関係の質)を高めていくことが重要であり、パワハラの予防につなげていくことができます。
【パワハラ予防カードとは】
パワハラ予防カードは、パワハラを未然に防ぐために知っておくべき知識と実践項目を厳選・順序化して55枚のカードにしたものです。
ぜひパワハラ予防カードを活用して、働きがいのある生産性の高い理想の職場を皆さんでつくっていってください。
TOPICS 労働関係情報
● 消費者庁 内部通報者を保護する指針公表
政府は、企業の不正を内部通報した人を保護するための指針をまとめた。通報者に降格や減給などの処分を行った役員らを懲戒処分にするよう企業に求めることが柱となる。公益通報者保護法の改正に伴うもので、改正法は来年6月までに施行される。
改正法では、従業員数300人を超える事業主に通報を受け付ける窓口の設置を義務付けており、担当者には守秘義務が課される。従業員数300人以下の場合は当面努力義務となる。
● 厚労省 令和2年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果を公表
厚生労働省は、令和2年度の監督指導の結果を公表し、未払賃金の遡及支払い額が100万円以上となった企業数が1,062企業、うち1,000万円以上となった企業数は112企業であることを明らかにした。
また、企業が調査の実施対象となった経緯として、「出勤を記録せずに働いている者がいる。管理者である店長はこのことを黙認している」、「自己申告制が適正に運用されていないため賃金不払残業が発生している」、「退勤処理を行った後に働いている者がいる」等の情報提供に基づいて実施した事例があることを明らかにした。
労働時間に関しては、正しい認識と適正な把握によって管理を徹底し、未払賃金の発生を防ぐ必要があるとしている。
「人」Book
『失敗しない定年延長』
石黒太郎・著、2020.10.30発行
光文社新書、税込み880円
何かと話題の「働かないおじさん」、中でも60歳以上の人達を本書では「残念なシニア」と呼んでいます。社員が残念なシニア化する主な要因は、定年後再雇用の仕組みによるモチベーションダウン、その前提としての年功的処遇など会社従属型による日本型人材マネジメントにあるとしており、その変革に向けて一石を投じています。
また、加齢に伴う体力、知力、心(価値観、性格)の変化についてデータで客観的に示され、シニアに適した職務についても丁寧に紹介されています。
いわゆる70歳就業法もあり、60歳以降の働く期間が長くなっていきます。バブル世代もシニア層にさしかかってきています。
一方で、95年にピークを迎えた生産年齢人口は減少の一途をたどっており、シニアの雇用が重要な経営課題となってきています。
本書はこの課題に関する論点が明確に示されており、検討の一助となってくれます。