総務の魂 vol.90

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総務の魂 vol.90

ワーク・エンゲイジメントを 高めましょう!⑨

実際にワーク・エンゲイジメントを向上させるためには「仕事の資源」と「個人の資源」を増やす取り組みが必要となります。今回は、仕事の資源を増やす取り組みについてです。下図は以前Vol.87で紹介したものです。仕事の資源は組織に関連した外的なものです。すなわち自分の成長や課題を乗り越えるために必要な組織や上司、同僚から得られる有用なものです。これらを組織として提供したり、自ら獲得していくことが大切です。

Ⅰ.上司のサポート

ワーク・エンゲイジメントを向上させるには、やはり上司のサポートがもっとも効果があります。具体的には、①適切なタイミングで適切なアドバイスをする、②時には仕事課題について一緒に考える、

③1on1ミーティング (上司と部下との間で、週1回~月1回、30分~1時間程度の定期的に行う1対1の対話)で、「業務における成功体験・失敗体験の振り返りと内省を行う」「仕事の悩みを聴く」「同僚や他部署との人間関係やコミュニケーションの円滑化を支援する」「業務の改善を行う」などを行います。

Ⅱ.仕事の裁量権を与える

人はそもそも自分の行動を自己決定できる主体でありたいと思っています。これは人が持つ心理的な欲求です。指示命令ばかりしたり、やらされ感を感じさせる仕事の与え方をすると、モチベーションはあがりません。したがって、部下の経験や能力を考慮して仕事の裁量を与えます。要するに仕事のやり方や工夫について、部下のやりたいようにやらせてあげるということです。もちろんその仕事の範囲の中で責任は持ってもらいます。

仕事の裁量権を与えることは、部下にとって活き活き働くための重要な仕事の資源となります。

次回は「仕事のパフォーマンスのフィードバック及び承認」について、お伝えします。

労働関係法令等の最近の動き:社会保険の適用拡大

2022年10月から、厚生年金適用者101人以上の企業は、パート・アルバイトの社会保険の加入条件が変わります!

 

2020年5月に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(年金制度改正法)が成立しました。これまで社会保険に加入しない労働時間で働いていたパート、アルバイトの内、改正後の要件を充たす者は社会保険への加入が義務付けられることになります。実は、従業員数500人超(501人以上)規模の企業は、2016年から適用されています。これがいよいよ2022年10月から、企業の従業員規模によって段階的に適用が拡大されます。

適用される法人・事業所を「特定適用事業所」といい、特定適用事業所における社会保険の被保険者区分は、”一般の被保険者”や”パートタイム労働者”と区別して「短時間労働者」が加わることになります。

2016年10月の従業員数500人超(501人以上)規模の企業が適用になった際には、短時間労働者が社会保険の加入を回避するために500人以下の企業へ転職したり、在職のまま労働時間を減らすといった事例が見られました。

企業にとっては、人材の流出や労働時間の減少による人手不足に陥る可能性があります。

2022年10月から適用拡大となる従業員数101人以上の企業におかれましては、早めの現状分析とシミュレーションを行い、人手不足を回避するための対策を準備して頂くことをお勧めいたします。

企業規模によって、適用拡大の開始時期が異なる

■ 従業員数とは

会社の常時使用する労働者数ではなく「厚生年金の被保険者数」で判断します。厚生年金の適用対象にならない従業員はカウントされません。

また、事業場ごとにカウントするのではなく、同一の法人番号である法人ごとの被保険者数で判断することになります。

 

■ 社会保険への加入が義務付けられる者

従来の要件に加え、拡大後の4つの要件をすべて満たす短時間労働者は、社会保険の被保険者になります。

さらに、2016年改正のときは、「雇用期間が1年以上見込まれる」が要件とされていましたが、今回の法改正により撤廃され、正規従業員等と同様に「雇用期間2か月超の見込」へ改正となった点も注意が必要です。

なお、社会保険の被扶養者かどうかを判断する年収130万円の基準に変更はありませんが、年収130万未満であっても、下表右の要件に当てはまる短時間労働者は被扶養者とならず、自身で勤務先の社会保険に加入します。

 

従 来 拡大後
・正規従業員/フルタイム従業員

・週の所定労働時間数および月の所定労働日数が、正規従業員の4分の3以上であるパート・アルバイト等

正規従業員の所定労働時間および所定労働日数が4分の3未満であっても以下の4つの要件をすべて満たす短時間労働者は、被保険者になります。

①週の所定労働時間が20時間以上あること

※ 雇用契約上の所定労働時間であり、臨時に生じた残業時間は含みません。

②雇用期間が2か月超見込まれること

③賃金月額が8.8万円以上(年収106万円以上)であること

※最低賃金に算入しない手当(精皆勤、通勤、家族)、残業代・賞与・臨時的な賃金等を除いた賃金月額

④学生でないこと

※休学中や夜間学生は加入対象

■ 従業員数の判断

法人事業所の場合は、同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が 12ヵ月のうち、6ヵ月以上 100人を超えることが見込まれる場合を指します。

施行日から、特定適用事業所に該当する適用事業所や該当する可能性がある適用事業所

→2021年10月~2022年8月までの各月において6ヵ月以上100人を超えたことが確認されたとき。

→8月頃に「該当する旨のお知らせ」が送付。10月頃に「特定適用事業所該当通知書」が送付。該当届の届出は不要。

施行日以降、特定適用事業所に該当する適用事業所や該当する可能性がある適用事業所

→年金機構が直近11ヵ月の内、5ヵ月100人を超えたことを確認できた場合(5ヵ月目の翌月も被保険者数が100人を超えると特定事業所に該当する場合)

→ 「該当する可能性がある旨のお知らせ」が送付。→ 5ヵ月目の翌月も該当したら、該当届を届出。

総務のお仕事カレンダー 2021年4月・2021年5月

4月1日(木) 2020年4月施行の主な法改正

Øパートタイム・有期雇用労働法の中小企業への適用開始

Ø改正高年齢者雇用安定法の施行(70歳までの就業確保措置の努力義務)

Ø改正労働施策総合推進法の施行(常時雇用する労働者数が301名以上の企業に対する中途採用比率の公表義務化)

Ø36協定等届出様式の押印廃止

4月12日(月) 3月分の源泉所得税・復興特別所得税・住民税特別徴収税の支払

■参考リンク:国税庁「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納付の特例」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm

4月30日(金) 3月分の健康保険・厚生年金保険料の支払

■参考リンク:日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/nofu/nofu.html

5月10日(月) 4月分の源泉所得税・復興特別所得税・住民税特別徴収税の支払

■参考リンク:国税庁「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納付の特例」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm

5月31日(月) 4月分の健康保険・厚生年金保険料の支払

■参考リンク:日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/nofu/nofu.html

[] 年次有給休暇の一斉付与

 有給休暇の付与基準日を各人の入社時期に関わらず年度初めの4月としている場合、今年度も忘れずに勤続年数に応じた日数の付与を行いましょう。

また、有給休暇の年5日取得義務については、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日を取得させる必要があります。全ての対象者が基準以上の日数を取得できるよう、計画的に取得を推進しましょう。

■ 参考リンク:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

[2] 健康保険料率および介護保険料率の変更

 令和3年度の協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率は、本年3月分(4月納付分)からの適用となります。

■ 参考リンク:全国健康保険協会「令和3年度保険料額表(令和3年3月から)」

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/r03/r3ryougakuhyou3gatukara/

[3] 令和3年度の雇用保険料率

令和3年4月1日から令和4年3月31日までの雇用保険料率は、昨年度から変更なく以下の通りとなっています。

■ 参考リンク:厚生労働省「令和3年度の雇用保険料率について」

https://www.mhlw.go.jp/content/000739455.pdf

[4] 労働保険年度更新の準備

例年6月1日から7月10日は労働保険料の申告・納付期間となります。早めの準備に取り掛かりましょう。

■ 参考リンク:厚生労働省「労働保険の適用・徴収」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/index.html

 健康で活き活き自分らしく! セルフケアカード好評発売中!

定価 3,000円(税別)

セルフケアとは?

セルフケア(self care)とは一  般的には自分自身で心や身体についてケア(管理や手入れなど)を行うことを言います。ここでは特に「働く人のメンタルヘルス(心の健康)において良くない状態であればそれを改善し、良い状態であればそれを保ちながら、さらに良くするためにケアすること」を指します。

セルフケアが必要な理由

働く人が主体的にセルフケアに取り組むことで、仕事を含めた日常生活において過度なストレスから自分自身を守り、健康的な生活を維持・向上させることができます。

その結果、組織の生産性が向上し、持続可能な発展へとつながっていきます。

セルフケアカードとは

効果的にセルフケアを行うための具体的なコーピング(ストレス対処)の手法、およびコーピングの前提となる自己理解において欠かせない感情表現を厳選・体系化して80枚のカードにしたものです。新入社員教育や管理職研修、ストレスチェック後のフォロー研修で活用できます。

ぜひセルフケアカードを活用して、健康で活き活きと自分らしく過ごしてください!結果として、会社の生産性も向上します。

TOPICS 労働関係情報

  • 男性の育児休業取得促進に関わる改正育児・介護休業法案を国会に提出 
  • 厚生労働省は、育児・介護休業法改正案を通常国会に提出した。改正法案の主な内容は次のとおり。①男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、②育児休業を取得しやすい雇用環境整備および妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、③育児休業の分割取得、④育児休業の取得状況の公表を義務付け、⑤有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和。

 

  • 「就職お祝い金」等の名目で求職者に金銭等を提供して求職の申し込みの勧奨を行うことを禁止
  • 3月2日、職業安定法に基づく指針が一部改正され、令和3年4月1日から適用される。改正方針では、職業紹介事業者の責務における適正な宣伝広告等に関する事項について、「就職お祝い金」その他これに類する名目で求職者に対して社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供し、求職の申し込みの勧奨を行ってはならないとしている。労働者を募集する企業が職業紹介事業者を利用する場合、上記のような職業紹介事業者が遵守すべき事項を踏まえ、適切な事業者を選ぶことが必要となる。

「人」Book

恐れのない組織

エイミー・C・エドモンドソン・著

野津智子・訳、英治出版

 2021.2.3、2,200円+税

 

著者のエドモンドソン教授は「心理的安全性」の概念を打ち立て、今や世界的に有名な研究者です。書名の「恐れのない組織」(フィアレスな組織)とは、心理的に安全な企業風土のある組織のことを著者がそう呼び、心理的安全性とは、率直に発言したり懸念や疑問やアイデアを話したりすることによる対人関係のリスクを人々が安心して取れる職場環境のことを言います。

心理的安全性があれば、従業員エンゲイジメントが高まり、チームの学習行動が促され、パフォーマンスも向上することが明らかになっています。

本書は、この概念を提唱した本人自ら、心理的安全性の誤解を解くことをはじめ、これまでの研究の経過や企業の事例とともにその本当の所を教えてくれます。また、フィアレスな組織をつくるステップまで紹介し、最後にはよくある質問への回答もあります。心理的安全性の理解には欠かせない一冊です。