総務の魂 vol.84

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総務の魂 vol.84

ワーク・エンゲイジメントを 高めましょう!③

仕事に誇りを持ち、仕事にエネルギーを注ぎ、仕事から活力を得ていきいきしている状態。このような状態を「ワーク・エンゲージメント」といいます。

今回からワーク・エンゲージメントに関して詳しく見ていきましょう。

Ⅰ.ワークエンゲージメントのはじまり

ワーク・エンゲージメントの考え方を学術用語として定義したのはオランダのユトレヒト大学のシャウフェリ教授です。シャウフェリ教授は長年ワーク・エンゲージメントの反対概念である「バーンアウト(燃え尽きてしまったかのように仕事への情熱や意欲を失った状態)」の研究に関わっていましたが、ある時からワーク・エンゲージメントに注目するようになりました。以下は、シャウフェリ教授が日本のワーク・エンゲージメント研究の第一人者である慶応大学の島津教授に語った言葉です。

シャウフェリ教授曰く、「自分は長年、バーンアウトの低減と予防に従事することで労働者の幸せに貢献したいと考えていた。しかし、それだけでは労働者の幸せに貢献するには十分でないことが分かった。確かにバーンアウトしていないことは幸せであることの一部ではあるが、それがすべてではない。バーンアウトしてないからといって、必ずしも幸せであるとは限らないからだ。

本当の幸せにつなげるためには、バーンアウトを防ぐとともに、仕事でいきいきとした状態を高める必要があるのではないか

Ⅱ.メンタルヘルスとワーク・エンゲージメント

これまでの日本のメンタルヘルス対策は、心の不調をいかに防ぐかという点に重点が置かれてきました。シャウフェリ教授の言葉にもあるように、労働者の幸せを総合的に考えた場合、心の不調を防ぐだけでは十分ではありません。

労働者の強みを伸ばし、いきいきと働くことのできる状態、すなわち「ワーク・エンゲージメント」の高い状態をつくることが、本当の心の健康につながります

よって、ワーク・エンゲージメントはポジティブなメンタルヘルスの側面も持ち合わせているといってもよいでしょう。今後は心の活力にも注目して、メンタルヘルスの活動範囲を広げていくことが望まれます。

Ⅲ.ワーク・エンゲージメントの定義

シャウフェリ教授はワーク・エンゲージメントを次のように定義しています。

「ワーク・エンゲージメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。ワーク・エンゲージメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である」   

少し難しいですが、皆さんは、ワーク・エンゲージメントとは、仕事から活力を得て「いきいき」とした状態であり、「活力」「熱意」「没頭」の3つの要素からなると覚えてください。

次回は3つの要素について紹介していきます。

労働関係法令等の最近の動き:2020年 法改正の一覧

過去の本紙に掲載した改正事項を含め、改めて2020年の主な法改正(施行)の全体像をご紹介します。

各企業様におかれましては、自社の実務的な対応の進捗をご確認ください。

また2020年中、個人情報保護法や改正情報処理促進法など複数の法律が施行・審議される見込みです。

施行時期 法改正 主な内容
2020年1月 労働保険や社会保険に関する受付窓口のワンストップ化 労働保険関係成立届について、対象事業の事業主が、健康保険法および厚生年金保険法上の「新規適用届」または雇用保険法上の「適用事業所設置届」と併せて提出しようとする場合においては、年金事務所、労働基準監督署またはハローワークにて受け付けることができる。
2020年4月 「同一労働同一賃金」(大企業)

中小企業は2021年4月1日から

同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止となる。

非正規雇用労働者が企業に入社する時と在職中に求めがあった時には、待遇の差について説明をしなければならない。

「時間外労働の上限規制」の適用(中小企業)

※ 適用猶予(自動車運転者・建設業・医師等)を除く

36協定締結時の限度時間数が法定され、特別条項についての総労働時間の上限も新しく定められる。これを上回る労働時間の定めや、実際の労働が行われた場合は労働基準法違反となる。
多くの施設で屋内が原則禁煙(健康増進法の一部改正) 原則「室内禁煙」となり、喫煙のためには施設内の喫煙室設置が求められる。
民法改正(債権法) •保証人の保護に関する改正

•約款(定型約款)を用いた取引に関する改正

•法定利率に関する改正

•消滅時効に関する改正

社会保険・労働保険に関する一部手続きの電子申請義務化(特定の法人) 資本金1億円以上など、特定の法人の事業所が社会保険・労働保険に関する一部の手続を行う場合、2020年4月からは必ず電子申請で行う必要がある。
64歳以上の社員の「雇用保険免除」廃止 平成29年1月1日より雇用保険の適用拡大が行われ、65歳以上の労働者も「高年齢被保険者」として雇用保険の適用対象となった。令和1年度までは64歳以上の社員の保険料は免除されていたのだが、令和2年3月でこの措置が廃止に。
AIやIoTの普及といったデジタル技術の革新に対応する「改正意匠法」 「産業財産権に関する訴訟制度の改善」「デジタル技術を活用したデザインの保護」「ブランド構築支援」を目的に、意匠法を改正
「被扶養者認定における国内居住要件」の新設 国内居住要件として認定されるのは、日本国内に住所を有する者、その他5パターン

①外国において留学をする学生

②日本からの海外赴任に同行する家族

③海外赴任中の身分関係の変更により新たな同行家族とみなすことができる者

④観光・保養やボランティアなど就労以外の目的で一時的に日本から海外に渡航している者

⑤その他日本に生活の基礎があると認められる特別な事情があるとして保険者が判断する者

2020年6月 「パワハラ防止関連法」施行開始(大企業)

中小企業は2022年4月1日から

•職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります(適切な措置を講じていない場合には是正指導の対象となります)

•パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申出を行うことができるようになります。

総務のお仕事カレンダー 2020年4月・2020年5月

4月1日(水) 2020年4月1日施行の主な法改正

Øパートタイム・有期雇用労働法の施行(中小企業は2020年4月1日から)

Ø時間外労働の上限規制 中小企業への適用開始

Ø特定の法人に対する社会保険・労働保険手続きの電子申請義務化

4月10日(金) 3月分の源泉所得税・復興特別所得税・住民税特別徴収税の支払

■参考リンク:国税庁「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納付の特例」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm

4月30日(木) 3月分の健康保険・厚生年金保険料の支払

■参考リンク:日本年金機構「保険料と総報酬制について」

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20140714.html

5月11日(月) 4月分の源泉所得税・復興特別所得税・住民税特別徴収税の支払

■参考リンク:国税庁「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納付の特例」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm

6月1日(月) 4月分の健康保険・厚生年金保険料の支払い

■参考リンク:日本年金機構「保険料と総報酬制について」

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20140714.html

[1] 年次有給休暇の一斉付与、取得状況・繰り越しの確認

 有給休暇の付与基準日を入社時期に関わらず年度初めの4月としている場合、今年度も忘れずに勤続年数に応じた日数の付与を行いましょう。

また、2019年4月1日より施行された年次有給休暇の付与日から1年以内での5日取得義務について、早い方では本年4月より最初の期限が経過します。昨年の4月付近に基準日がある方については、現在までの年休取得状況を確認しましょう。取得が順調に進んでいない従業員については呼びかけ等により取得を促進しましょう。どうしても自主的に有休を取得しない従業員については、意見を聴取聴取した上で時季指定を行いましょう。まだ就業規則において時期指定の根拠条文が整備されていない場合は、是非弊社の顧問担当へご相談ください。

■ 参考リンク:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

[2] 健康保険料率および介護保険料率の変更

令和2年度の協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率は、本年3月分(4月納付分)からの適用となります。

■ 参考リンク:全国健康保険協会「令和2年度保険料額表」

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3150/r02/r2ryougakuhyou3gatukara/

[3] 令和2年度の雇用保険料率

令和2年4月1日から令和3年3月31日までの雇用保険料率は、昨年度から変更なく以下のとおりとなっています。

■ 参考リンク:厚生労働省「令和2年度の雇用保険料率について」

https://www.mhlw.go.jp/content/000617016.pdf

 自分の持ち味に気づいていますか? 持ち味カードリニューアル発売中!

あなたは自分の『持ち味』に気づいていますか!?

自分にとって納得のいく人生を築くためには、いかに「自分の持ち味を活かすか」が大切です。それは特別に何か新しいものを付け加えることではなく、今の自分をフルに活かすということです。他人と比べる必要もありません。

そのように人生を送ることができれば、誰もが幸せな人生を獲得でき、社会に貢献することができます。

ところが多くの人々は自分自身の「持ち味」に気づいていないか、活かしきれていないようです。

弊社では、ビジネスパーソンに自身の「持ち味」を自覚し、活かしてもらうことは、自分らしくイキイキ働く拠り所となり、ひいては組織の成長発展や社会全体の活性化に大変意義のあることと考えました。

このような観点から「持ち味カード」を開発し、「持ち味」の奥深さ・素晴らしさの普及に努めております。

ぜひ、「持ち味カード」を活用して、あなたらしい輝く人生を獲得してください。

また、経営者におかれましては、社員の持ち味を活かした「持ち味経営」の実践を通じて、笑顔あふれる生産性の高い会社にしていただきたいと願っております。

TOPICS 労働関係情報

受動喫煙防止対策が厳格化 原則室内は禁煙に

改正健康増進法が4月1日に全面施行され、受動喫煙対策が厳格化される。第二種施設にあたる事務所や工場などが「原則室内禁煙」となる。違反が発覚し、改善が見られない場合には罰則もあり、受動喫煙対策がマナーからルールに格上げされたと言える。

第一種施設である学校、病院、行政機関の庁舎などはすでに「敷地内禁煙」で、このたび第二種施設の事務所や工場などは「原則室内禁煙」となる。後者は、喫煙専用室を設置できるが、煙の流出防止措置など厳しい基準が課せられる。

 

ハローワーク 求人不受理を拡大へ 法令違反企業が対象

3月末より全国のハローワークなどにおいて、全求人を対象に、労働関係法令違反を繰り返す企業からの求人不受理制度がスタートした。6月からはパワーハラスメント防止措置に関する違反企業も対象になる。採用活動が滞れば企業経営に深刻な影響が出るため、企業はこれまで以上に法令順守に細心の注意を払う必要がある。

制度の対象となる労働関係法は、労働基準法における男女同一賃金、強制労働の禁止、労働条件の明示、労働時間、休憩・休日・有給休暇のほか、男女雇用機会均等法、最低賃金法、育児介護休業法、職安法の規定を含んでおり、広範囲に及ぶ。

「人」Book

ワーク・エンゲイジメント入門

ウィルマ―・B・シャウフェリ 他・著

島津明人 他・訳、2012.11.10
星和書店、1,900円+税

 

前号でご紹介した『ここから始める働く人のポジティブメンタルヘルス』と関連の深いワーク・エンゲイジメントがテーマの本です。

「仕事に誇りを持ち、仕事にエネルギーを注ぎ、仕事から活力を得て活き活きしている状態」。このような状態を「ワーク・エンゲイジメント」と言います。本書はこの提唱者であるシャウフェリ教授自身が書いています。

昨今、組織人事分野で「従業員エンゲージメント」あるいは「エンゲージメント」という用語が流行のように持てはやされていますが、実はこれらは定義が曖昧で理論的に解明されているわけではありません。これに対して「ワーク・エンゲイジメント」はこれまでの研究成果に基づいて理論が確立されています。本書は、ワーク・エンゲイジメントの概念とともに、それを高めるために従業員個人と組織それぞれにできることは何かについて、とてもわかりやすくまとめられており、実践的です。