総務の魂 vol.88

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総務の魂 vol.88

ワーク・エンゲイジメントを 高めましょう!⑦

前回はワーク・エンゲイジメントを高める要因(仕事の資源と個人の資源)について紹介しましたが、今回はワーク・エンゲイジメントが高まると、その結果、どんな良いことが起こるのかを紹介します。

Ⅰ.心身の健康との関連

ワーク・エンゲイジメントは健康面と大きく関係しています。これまでの研究によりますと、ワーク・エンゲイジメントの高い従業員は、不安、抑うつ、怒りなどの心理的なストレス反応や体の不調が少ないことが明らかにされています。

また、不眠症状も少ないということです。睡眠の質が良いということは、健康を保つうえでとても大切なことです。

Ⅱ.仕事・組織に対する態度との関連

従業員が仕事や組織に対してどのように向き合っているかは、大きな関心事です。ワーク・エンゲイジメントが高い従業員は、職務満足感や組織へのコミットメント(責任を持って引き受ける、参加する)が高く離職や転職の意思が低いことが知られています。

長期的に見ても、仕事に満足し、組織への愛着が深く、仕事も辞めにくいと言えます。

Ⅲ.パフォーマンスとの関連

これまでの研究では、ワーク・エンゲイジメントが高いほど、自己啓発学習への動機づけが高く、創造的な行動を多く行い、役割行動や役割以外の行動を積極的に行うほか、部下への適切な行動を行うことが明らかにされています。

これまで述べたワーク・エンゲイジメントの結果は実証研究によって証明されているものです。これらの結果を踏まえると、今後、企業の最も重要な経営戦略は従業員のワーク・エンゲイジメントをいかに高めるかにあると言っても過言ではありません。次回は『仕事の要求度-資源モデル』についてお伝えします。

労働関係法令等の最近の動き:『労働時間の適正な把握のための使用者が講ずべき措置』

働き方改革により「労働安全衛生法」が改正され、20194月から各企業には省令に定める方法により、従業員の労働時間を把握することが義務化されております。実はこれまでも、厚生労働省のガイドラインにより、会社には従業員の労働時間を適正に把握することが求められていました。 このガイドラインは、割増賃金を適正に支払うことを目的としていたため、労基法上の「管理監督者」や「裁量労働制」「事業場外労働のみなし労働時間制」の適用労働者は、対象外とされていました。今般の“労働者の労働時間の状況を把握する義務”は、『会社が労働契約に伴う義務として労働者に対して負っている安全配慮義務や健康管理義務(労働契約法第5条)に基づき負うものと判例上認められていた義務』を明文化したもので、労働者の健康管理を目的としているため、「管理監督者」や「裁量労働制の適用労働者」も含め、「高度プロフェッショナル制度」の対象者以外のすべての労働者が義務化の対象となっています。

労働安全衛生法 第66条の83 】 新設

事業者は、第66条の8第1項(1)又は前条第1項の規定による面接指導(2)を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第1項に規定する者(*3)を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

*1 第66条の8第1項=長時間労働者に対する医師の面接指導

*2 前条第1項の規定による面接指導=「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」に就く労働者に対する医師の面接指導

*3 次条第1項に規定する者:高度プロフェッショナル制度の対象者

項 目

法改正前

法改正後(2019年4月1日~)

労働時間把握義務の法的根拠 【ガイドライン】

国や自治体などが関係者らが取り組むことが望ましいとされる指針や、基準となる目安などを示したもの。

法的な拘束力はない。行政指導の基準。

ただし、労基法で賃金台帳への労働時間の記載義務あり(間接的に把握義務あり)

【安衛法、省令】 ※法的基準に格上げ

安衛法で義務を条文化

厚生労働省令で具体的方法を明示

法的な拘束力がある。

重視する目的 ◎残業代の不払い防止 ◎従業員の健康管理

○残業代の不払い防止

労働時間把握の対象者 一般従業員

管理監督者の深夜労働

裁量労働制適用者の休日・深夜労働

高度プロフェッショナル制度対象者を除き、

すべての労働者(管理監督者、裁量労働制適用者を含む)

罰 則 なし。但し、労基法(賃金台帳への記載)に違反したときは、30万円以下の罰金

厚生労働省令(労働安全衛生規則 「健康の保持増進のための措置」)には、下記の方法が定められています。

【労働安全衛生規則 第52条の3】

法第66条の8の3の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。

2 事業者は、前項に規定する方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、三年間保存するため

の必要な措置を講じなければならない。

具体的には、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の内容に沿った下記の方法になります。

1.始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。

使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。

② タイムカード、ICカード、パソコン使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に把握すること。

 2.自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

上記1.の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。

① 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

② 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。

必要に応じて実態調査を実施し、自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、所要の労働時間の補正をすること。

特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。

今年夏以降、労働者の申告(賃金不払い等)や定期監督により、是正勧告・指導を受ける事案が増えております。自社の労働時間の把握方法や賃金計算方法に関して改めて点検を行い、必要に応じて、始業・終業・休憩時刻の記録方法の見直し、時間外労働の申請・許可方法の見直し、勤怠管理ツールの導入をご検討ください。

総務のお仕事カレンダー 2020年12月・2021年1月

12月10日(木) 11月分の源泉所得税・復興特別所得税・住民税特別徴収税の支払

■参考リンク:国税庁「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納付の特例」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm

1月4日(月) 11月分の健康保険・厚生年金保険料の支払

■参考リンク:日本年金機構「保険料と総報酬制について」

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20140714.html

1月12日(火) 12月分の源泉所得税・復興特別所得税・住民税特別徴収税の支払

■参考リンク:国税庁「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納付の特例」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm

2月1日(月) 12月分の健康保険・厚生年金保険料の支払

■参考リンク:日本年金機構「保険料と総報酬制について」

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20140714.html

法定調書(源泉徴収票、報酬支払調書、法定調書合計表)の提出

■参考リンク:国税庁「法定調書の種類および提出期限」

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/01.htm

給与支払報告書の提出

■参考リンク:名古屋市「「給与支払報告書」について」

https://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/392-4-11-2-0-0-0-0-0-0.html

[1] 賞与支払届の提出

 従業員に賞与を支給した場合、支給日から5日以内に年金事務所(健康保険組合に加入している場合は健康保険組合)へ賞与支払届を提出する必要があります。

■ 参考リンク:日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20141203.html

[2] 年末調整

年末調整に係る資料の回収・申告漏れのチェック等の作業は順調でしょうか?各従業員から必要に応じて「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」、「給与所得者の保険料控除申告書」、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」等を回収する必要があります。

■ 参考リンク:国税庁「年末調整がよくわかるページ」

https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index.htm

[3] 仕事納め

1年の終わりに向けて慌ただしさが増す中、お歳暮の準備・年賀状のチェックと発送・取引先等の年末年始休暇の確認など、社内外で仕事納めに向けて様々な準備が必要となります。

[] 令和3年の祝日に関する確認

来年、令和3年に限り、「海の日」は7月22日に、「スポーツの日」は7月23日に、「山の日」は8月8日になります。また、国民の祝日に関する法律に基づき、8月9日は休日となります。来年度の会社カレンダー作成の際には留意してください。

■ 参考リンク:内閣府「「国民の祝日」について」

https://www8.cao.go.jp/chosei/shukujitsu/gaiyou.html#tokurei

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TOPICS 労働関係情報

●年休取得は過去最多 年5日の義務に効果 厚労省調査

労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数が10日を超え、過去最多となったことが厚生労働省の令和2年「就労条件総合調査」により分かった。
平均取得日数は10.1日で昨年の9.4日から0.7日増加した。平均取得率は56.3%(前年52.4%)でこちらも過去最高を記録している。男女別にみると、男性は9.9日(53.7%)、女性は10.4日(60.7%)だった。
計画的付与制度がある企業の割合は43.2%と、前年の22.2%から大幅に増加した。計画的付与の日数は5~6日が66.6%となっている。

●内定率急落、リーマン以来 大卒5年ぶり70%割れ

来春卒業予定で就職を希望する大学生の10月1日時点の内定率は、前年同期比7.0ポイント減の69.8%だったことが文科省・厚労省の調査で分かった。1996年の調査開始以降、リーマン・ショック後の2009年の7.4ポイント減に次ぐ下落幅となった。この時期としては5年ぶりに70%を下回り、新型コロナウイルスの影響が鮮明になった。短大は13.5ポイント減、専修学校も14.9ポイント減といずれも過去最大の落ち込みとなった。
企業には採用人数を抑制したり、内定を取り消したりする動きが出ており、厚労省と文科省は大学生らの卒業から3年以内は新卒扱いで採用するよう企業に求めている。

「人」Book

 他者と働く

宇田川 元一・著 2019.10.4
NewsPicks、1,800円+税

 

毎年この時期に「日本の人事部」から発表されるHRアワードの今年度の書籍部門で最優秀賞を受賞した書籍です。
サブタイトルは「『わかりあえなさ』から始める組織論」。組織の中で起きている「わかりあえなさ」や「やっかいな問題」など組織の生々しい現実、個々人のノウハウやスキルで一方的には解決できない問題、これをいかに解くかが主題であり、そのための実践として「対話」によるアプローチを紹介しています。対話によって他者(相手)との新しい関係性を構築し、問題の解消をめざそうというものです。
著者は埼玉大学の学者です。本書は一般向けの読み物ではなく、対話は①準備→②観察→③解釈→④介入というプロセスを繰り返すなど、理論的な説明が丁寧になされたビジネス書です。ただ、この類の本には珍しく情緒的な表現も垣間見え、本質的な内容でありながら妙に温かい本でもあります。